漁業の外国人材育成が「採用」から「3年後の特定技能1号」設計へ 水産庁がキャリア形成プログラムを公表
2026年9月5日
水産庁は2026年5月、漁業分野の育成・キャリア形成プログラムを公表した。2027年4月の育成就労開始を前に、漁業者には採用時点から技能、安全、日本語、特定技能1号移行までを一体管理する体制づくりが求められる。
ニュースの核心
水産庁は2026年5月28日、漁業分野の「育成・キャリア形成プログラム」を公表した。2027年4月1日に運用開始予定の育成就労制度では、原則3年間の就労を通じて特定技能1号水準の人材を育成する制度設計となっており、漁業事業者にとって外国人採用は、単に乗組員や養殖現場の欠員を埋める手段から、数年間の技能形成を前提とした人材戦略へ移る。
漁業分野では既に特定技能による受入れが行われており、漁船漁業と養殖業が対象となっている。水産庁は、初めて特定技能外国人を受け入れる機関について、在留資格認定証明書交付申請の前に漁業特定技能協議会への加入を求めている。つまり、採用契約を結んでから制度対応を考えるのでは遅く、協議会加入、業務内容、支援計画、安全管理、在留申請を逆算して準備する必要がある。
漁業特有の課題は安全と技能の可視化
漁業は他分野と比べ、海上作業、天候変化、漁具・機械の操作、夜間作業など、安全面の管理負担が大きい。外国人本人が日常会話を理解できても、緊急時の指示や専門用語が十分伝わらなければ重大事故につながる。このため企業側は、日本語試験合格だけを能力確認の終点とせず、「止まれ」「離れろ」「巻き込まれるな」といった危険回避指示、漁具の名称、作業工程、救命設備の使用法を就業前教育に組み込む必要がある。
特定技能1号への移行では、原則として分野の技能試験と日本語能力の要件を満たす必要があり、一定の技能実習修了者については試験免除の仕組みがある。漁業技能測定試験は大日本水産会が案内している。採用担当者は候補者ごとに、技能実習からの移行なのか、試験合格による新規採用なのか、育成就労からの将来移行を予定するのかを区別し、必要書類と教育内容を管理しなければならない。
企業が今準備すべきこと
実務では、第一に「何年後にどの技能水準まで育てるか」を職種別に定義することが重要だ。例えば漁船漁業であれば、乗船直後に任せられる補助作業、中期的に習得させる漁具操作、単独判断を認める作業を分ける。養殖業であれば、給餌、設備点検、選別、出荷準備などを段階化する。教育記録を残しておけば、担当者交代時の引継ぎだけでなく、在留資格変更や将来のキャリア説明にも利用できる。
第二に、日本人従業員側の教育も必要になる。外国人だけに研修を課しても、現場責任者が制度や支援義務を理解していなければ定着は難しい。労働時間、休日、賃金控除、住居費、食費、船内生活のルールなどについて、口頭説明だけでなく、外国人が理解できる方法で明文化することが望ましい。特に漁業では勤務場所や作業時間が陸上産業と異なるため、採用時の説明不足が早期離職や労務紛争に直結する。
外国人本人への影響
本人にとっては、育成就労から特定技能1号、その先の上位資格や長期就労までの経路が見えるかどうかが勤務先選びの重要な判断材料になる。給与だけでなく、資格取得支援、日本語学習、技能試験受験、担当業務の拡大が明確な企業ほど、中長期の就労先として選ばれやすくなる。逆に、数年間同じ補助作業だけを続けさせる人事運用は、新制度の人材育成という方向性との整合を説明しにくい。
今後の焦点
2027年4月の育成就労開始に向け、漁業分野では分野別の具体的運用、試験、受入れ基準、監理支援の実務がさらに整備される見通しだ。特定技能だけを利用する企業にも影響は大きい。育成就労で育った人材が特定技能市場に入れば、企業間の採用競争は「人数の確保」から「教育・待遇・キャリアの質」に移るからだ。漁業者は2026年度中に、採用、支援、安全教育、技能評価を一つの人材管理表に統合しておくべきである。情報確認日:2026年9月5日。