自動車運送業の特定技能は「試験合格=乗務開始」ではない 免許・協議会・雇用準備を整理
2026年9月5日
トラック・バス・タクシーを対象とする自動車運送業特定技能では、評価試験に加えて日本の運転免許など乗務に必要な条件がある。受入れ企業と登録支援機関は分野別協議会対応も必要となる。
評価試験に合格しても直ちに営業運転できるわけではない
自動車運送業分野の特定技能1号では、トラック、バス、タクシーの運転業務で外国人材を受け入れることが可能になっている。ただし、特定技能評価試験に合格したことと、日本国内で事業用車両に乗務できることは同義ではない。日本で運転業務を行うには業務区分に応じた日本の運転免許その他の条件を満たす必要があり、企業は採用内定から実際の乗務開始までを別工程として設計しなければならない。
評価試験は日本海事協会が実施
国土交通省によると、自動車運送業分野特定技能1号評価試験は一般財団法人日本海事協会が実施している。試験制度は2024年12月に開始が公表され、その後実際の外国人採用が進められている。企業は候補者が「特定技能の試験に合格した」という情報だけで採用判断せず、トラック、バス、タクシーのどの業務区分の試験に合格しているのか、本人が保有する免許、今後必要となる免許取得・切替手続を確認する必要がある。
協議会は2025年から加入受付、2026年も運用継続
自動車運送業分野特定技能協議会は2025年1月17日に加入受付を開始し、2026年にも受入れ企業・登録支援機関の加入、変更、資格証明書、退会等の手続が運用されている。国土交通省は2026年6月1日にQ&Aを更新し、協議会関係の問い合わせ窓口も案内している。外国人本人の在留申請だけに集中し、所属機関側の協議会手続を後回しにしないよう注意が必要だ。
乗務前期間の雇用設計が他分野以上に重要
海外採用者が来日後に日本の免許取得や切替、必要な研修等を行うケースでは、入国日と営業乗務開始日に時間差が生じる可能性がある。企業は、この期間に本人がどの在留資格・活動の下で何を行えるのか、賃金をどのように支払うのか、住居費や研修費を誰が負担するのかを事前に整理しなければならない。行政上認められた活動範囲を超えて、免許取得前の外国人に実質的な運転業務をさせることは避ける必要がある。
バス・タクシーでは旅客対応能力も不可欠
トラックと異なり、バスやタクシーでは乗客との会話、運賃・経路説明、事故・災害時の案内、忘れ物対応など対人コミュニケーションが職務の中心になる。制度上必要な日本語能力を満たしても、それだけで旅客運送に必要な接客日本語が十分とは限らない。受入れ企業は地域の地名、道路標識、無線・配車アプリ、緊急対応を含む職場教育を行い、単独乗務前に社内基準で技能を確認することが重要だ。
外国人本人は免許取得コストと条件を確認
外国人求職者にとっては、求人票の給与だけでなく、日本の運転免許取得・切替に必要な期間、費用、教習、試験、会社からの支援内容を確認することが重要になる。会社が費用を立替える場合には、退職時の返済条件が労働関係法令上問題のない設計になっているか企業側も慎重に検討する必要がある。免許取得を理由に過度な違約金や退職制限を設けることは適切ではない。
採用担当と運行管理部門を分離しない
自動車運送業の特定技能採用では、人事担当者だけで制度を運用すると、在留資格と道路運送実務の間にずれが生じやすい。採用担当、運行管理者、安全管理担当、登録支援機関が共同で、評価試験、在留資格、免許、乗務前教育、健康管理、協議会手続を一つの工程表にまとめることが重要である。外国人を確保することより、合法かつ安全に単独乗務できる日までを設計することが、この分野の採用実務の核心となる。