漁業の特定技能、採用前に押さえる「漁業・養殖業」の2区分 技能試験と派遣受入れを制度から整理
2026年9月5日
漁業分野の特定技能1号は「漁業」と「養殖業」の2業務区分で運用され、技能試験と日本語能力の確認が基本となる。直接雇用だけでなく派遣形態も認められる漁業特有の制度を、採用実務の観点から整理する。
漁業分野は「漁業」と「養殖業」の2区分
漁業分野で特定技能外国人を採用する際、企業が最初に確認すべきなのは、予定する仕事が「漁業」と「養殖業」のどちらの業務区分に該当するかである。政府は2026年1月23日に特定技能制度と2027年4月開始予定の育成就労制度について新たな分野別運用方針を決定しており、漁業も両制度を見据えた人材確保の対象分野となっている。
特定技能1号の漁業区分には、漁具の製作・補修、水産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、水産動植物の採捕、漁獲物の処理、安全衛生確保などが含まれる。養殖業区分では、養殖資材の製作・補修・管理、水産動植物の育成管理、収穫・処理、安全衛生確保などが対象となる。単に「水産会社だから対象」と判断せず、外国人に実際に担当させる作業と制度上の業務区分を照合する必要がある。
試験ルートと技能実習からの移行ルート
原則的な取得ルートでは、「1号漁業技能測定試験」と日本語試験への合格が必要となる。技能試験には漁業と養殖業の区分があり、日本語については国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)または日本語能力試験(JLPT)N4以上など所定の基準を満たす必要がある。一方、対応する漁業分野の技能実習2号を良好に修了した者は、一定の場合に技能・日本語試験が免除される。
技能実習から移行させる場合にも注意が必要だ。技能実習で経験した作業と、特定技能で就かせようとする業務区分との関係を確認しなければならない。水産庁資料では、所定の技能実習2号を良好に修了した場合の移行関係が示されているため、企業は候補者の技能実習修了証明、評価試験の結果、従事作業を採用決定前に確認しておくべきである。
漁業では派遣形態も制度上認められる
漁業分野の大きな特徴が雇用形態である。特定技能制度の多くの分野では直接雇用が基本だが、農業と漁業については制度上、一定の要件の下で派遣形態による受入れも可能とされている。季節、漁期、地域によって労働需要が変動しやすい産業特性を踏まえた仕組みである。ただし、一般的な人材派遣と同じ感覚で運用できるわけではなく、派遣元、派遣先、対象業務などについて特定技能制度と労働者派遣法双方の要件を確認する必要がある。
受入れ企業には、労働関係法令の遵守、日本人が同等の業務に従事する場合と同等以上の報酬、適切な雇用契約など、特定技能共通の基準も適用される。海上作業や機械操作を伴う漁業では、安全教育を外国人本人が理解できる方法で実施することも実務上重要だ。日本語試験に合格していることと、船上で安全指示を即座に理解できることは同義ではない。
企業は「採用できるか」より「どの仕事を任せるか」を先に確認
採用担当者は、①予定業務の区分、②候補者の技能試験または技能実習歴、③日本語資格、④直接雇用か派遣か、⑤賃金・労働時間、⑥1号特定技能外国人支援計画、⑦分野固有の受入れ要件を一つのチェックリストで管理したい。漁船名や事業所だけを基準に判断するのではなく、実際の職務内容から在留資格との適合性を確認することが重要である。
今後は2027年4月開始予定の育成就労制度との接続も焦点になる。特定技能は即戦力人材の受入れ、育成就労は人材を育成・確保する制度という位置付けが異なる。漁業会社にとっては、短期の人数確保だけでなく、育成、特定技能1号、さらに熟練人材へのキャリア形成までを含む中長期の人材計画を設計する段階に入っている。