農業特定技能は派遣受入れが可能 季節繁閑に対応する制度と企業の責任を整理
2026年9月5日
農業分野の特定技能は、制度上の条件を満たす場合に直接雇用だけでなく労働者派遣形態での受入れが認められている。季節的な繁閑に対応できる一方、派遣元・派遣先双方に適正な受入れ管理が必要だ。
農業は特定技能で派遣形態を利用できる例外的分野
農業分野の特定技能では、直接雇用に加えて一定の条件の下で労働者派遣形態による受入れが認められている。農林水産省は、冬季に農作業ができない地域があることや、同じ地域でも作目ごとに収穫・定植等のピークが異なることなど、農業特有の季節変動を制度上の背景として説明している。農繁期に合わせて複数産地間で人材を配置できる点は大きな特徴だが、一般の人材派遣会社が自由に特定技能外国人を農家へ派遣できる制度ではない。
派遣元には特定技能固有の適格性が必要
農業分野で外国人を派遣する事業者は、労働者派遣法上の許可だけでなく、特定技能制度上定められた要件に適合し、法務大臣が農林水産大臣と協議した上で適当と認める仕組みの対象となる。農林水産省は直接雇用の所属機関用、派遣先事業者用、派遣形態の所属機関用、登録支援機関用にそれぞれ誓約書を用意している。農業法人が「派遣会社から紹介されたから問題ない」と判断せず、その派遣事業者が農業特定技能の派遣に対応できる主体かを確認する必要がある。
派遣先農家にも受入れ責任がある
雇用契約の当事者が派遣元であっても、実際に農作業を行う農家や農業法人には安全な作業環境の確保、適切な指揮命令、労働時間管理への協力など重要な責任がある。派遣先事業者誓約書が用意されていることからも、派遣先が制度運用の外部にいるわけではないことは明らかだ。農繁期に長時間労働が集中しないよう勤務実績を派遣元と共有し、住居や移動手段についても責任分担を明確にしておく必要がある。
直接雇用と派遣は農場の経営モデルで使い分ける
年間を通して安定した作業量がある農業法人であれば、直接雇用によって技能や日本語能力を長期的に育成しやすい。一方、収穫期だけ急激に人手が必要となる産地では、制度要件を満たす派遣形態が労働力調整に適する場合がある。重要なのは人件費だけで選択しないことである。派遣料金、住居、移動、支援、教育、受入れ事務を含む総コストを比較し、外国人本人の雇用安定性も考慮する必要がある。
農作業安全は外国人向けに具体的に教育
農林水産省は外国人労働者向けの農作業安全教材や熱中症対策資料を案内している。農業では農業機械、刃物、農薬、高温環境、傾斜地作業など事故につながる要因が多く、一般的な入社オリエンテーションだけでは不十分である。外国人本人が理解できる言語・図解を利用し、トラクター等の機械操作を任せる場合には法令・社内基準上必要な資格や教育を確認しなければならない。
協議会は2026年6月にも制度運用を更新
農林水産省は2026年6月25日に第11回農業特定技能協議会運営委員会を開催し、同時に第1回農業育成就労協議会も開いている。また6月29日には農業者、農業関係団体、自治体担当者向けの外国人受入れセミナーを開催した。2027年の育成就労開始に向け制度の接続が進む中でも、現在の特定技能受入れでは農業特定技能協議会や現行運用要領への対応が必要である。
外国人本人には「どこで働くか」を明示する
派遣形態では複数の農場・地域で就労する可能性があるため、外国人本人に勤務先変更のルール、移動方法、宿舎、給与計算、休日、交通費等を具体的に説明することが特に重要となる。季節によって就業場所を移す場合には、単に「日本全国の農場で働く」とだけ説明するのではなく、想定地域と配置期間をできる限り示すべきだ。本人の生活基盤を無視した頻繁な移動は定着にも悪影響を及ぼす。
農業経営者は派遣元の適格性と支援品質を確認
農業特定技能の派遣は人手不足対策として有効だが、制度上の例外を活用する以上、派遣元選定が重要になる。農業分野での派遣資格、協議会対応、1号支援の実施方法、住居・移動手配、労災時の連絡体制、途中離職時の対応を契約前に確認する必要がある。安価な派遣料金のみを基準にせず、法令遵守と人権配慮を含めた受入れ体制を確認することが、農場側のリスク管理にも直結する。