漁業の育成就労、2027年4月開始へ準備本格化 水産庁が行動規範とキャリア形成の枠組み整備
2026年9月15日
水産庁は2027年4月の育成就労制度開始に向け、漁業分野の協議会、行動規範、育成・キャリア形成プログラムを整備した。漁業者は特定技能採用と育成就労を一体で設計する段階に入る。
漁業の外国人材受入れが「採用」から「育成」へ広がる
水産庁は2026年、2027年4月1日に始まる育成就労制度を見据え、漁業分野の受入れ体制を相次いで具体化した。4月10日に第1回漁業育成就労協議会、5月28日に第2回協議会を開催し、同日には「育成就労外国人の円滑かつ適正な受入れの実現に向けた行動規範」と「育成・キャリア形成プログラム」を整備した。漁船漁業や養殖業で外国人を受け入れる事業者にとって、制度移行は単なる在留資格の名称変更ではない。
育成就労制度は、人手不足分野で3年間の就労を通じ、特定技能1号水準の技能を持つ人材を育成・確保する制度である。漁業は育成就労の対象分野となっており、2026年1月23日に特定技能と育成就労を一体化した分野別運用方針が決定された。技能実習制度で重視されてきた国際貢献という制度目的から、人材の育成と確保を正面から位置付ける仕組みへ移る。
協議会参加と行動規範への対応が実務課題になる
水産庁が設けた漁業育成就労協議会は、制度の適切な運用と外国人保護を進めるための枠組みだ。5月28日に決定された行動規範は、受入れを人数確保だけで捉えず、適正な雇用、技能形成、生活環境などを含む運用を求める方向性を示している。監理支援機関についても協議会構成員としての手続が進められている。
企業側で最初に行うべきことは、現在の外国人採用を「技能実習」「特定技能」「2027年度以降の育成就労」に分けて整理することだ。既存の技能実習生については経過措置があるため、2027年4月に全員が一斉に育成就労へ切り替わるわけではない。一方、新規採用では育成就労から特定技能1号への移行を想定した教育計画が採用条件の一部になる。
現場教育を属人的なOJTから記録できる仕組みへ
漁業では船上作業、漁具の取扱い、漁獲物の処理、養殖施設の管理など、現場で習得する技能が多い。従来は熟練者が横について教えるOJTが中心だった事業者でも、育成就労では「3年間で何を習得させるか」を説明できる教育設計が重要になる。安全教育についても、単に日本語資料を渡すのではなく、本人が理解できる方法で確認する仕組みを作るべきだ。
採用担当者は、作業を入社直後、半年後、1年後、2年後、3年後に分解し、それぞれで求める技能、日本語、作業安全能力を整理するとよい。漁船や養殖現場では地域・魚種・季節によって作業内容が変化するため、年間作業表と教育計画を連動させることも有効になる。
外国人本人にとってもキャリアの見通しが重要になる
外国人側から見れば、制度変更の核心は「日本で3年間働いた後に何ができるのか」が従来以上に明確になる点にある。育成就労から特定技能1号へ進み、さらに将来の技能向上を目指すのであれば、来日前から技能試験、日本語学習、職務内容を理解しておく必要がある。受入れ企業が採用面接で給与だけを説明し、技能形成の道筋を示さない採用方法は制度の方向性と合わなくなる。
2026年度中に受入れ企業が準備すること
漁業事業者は、制度施行直前まで待つのではなく、現在の技能実習・特定技能の受入れ状況、指導者、宿舎、生活支援、安全教育、技能評価の方法を棚卸ししたい。特に海外から継続的に人材を採用する企業では、送り出し段階の教育と日本入国後の現場教育を一本のカリキュラムとしてつなげることが重要になる。
今後確認すべき焦点は、育成就労計画の具体的な認定実務、監理支援機関の選定、分野固有の技能評価、特定技能への移行条件である。2027年4月を「制度開始日」として待つのではなく、2026年度を採用・教育体制の組み替え期間として使えるかが、漁業分野の外国人材定着を左右する。